Road painting for accessible bus stops

Implementation of road painting at the bus stop at the west exit of Oomiya Station.

Jin Ryunosuke

Journal of Students Inquiry Volume 3 Issue 2

さいたま市の東西の交通要所である大宮駅の西口バス停は、通勤時間帯を中心とした激しい混雑が課題となっていた。この課題を解決するためになにができるかを考えていると、都内の駅ホームにある、路線ごとに整列位置を分けるペイントが目に入った。バス乗り場に対しても整列位置のペイントを行うことができれば多くの人にとって利用しやすいバス停を作ることが可能になると考え、多くの人と協力してペイントを実現し、前よりも利用しやすいバス停環境を整えられた。  

キーワード: ロードペイント、バス停改善、大宮駅西口 

 

1.1.さいたま市の交通について  

図1.1:平日一日当たりの電車運行両数※1,2,3
(JR東日本旅客鉄道株式会社、東武鉄道株式会社、埼玉新都市交通及び国土地理院より筆者作成)

左の図は、さいたま市の鉄道路線網と、各路線の1日当たりの運行車両数を示している。南北方向に伸びる路線は市内中央に集中しているものの、運行両数は充実している。一方で、東西方向の交通は、市内北端を走る川越線と野田線、南端を走る武蔵野線に限られている上、運行両数がどちらも少なくなっている。このことを踏まえると、市内の鉄道網には偏りが生じているといえる。  

 市内に多くある鉄道で交通がカバーされていない地域の交通は、多くのバス路線によって支えられている。  

1.2.大宮駅西口バス乗り場について 

図1.2:大宮駅西口バス乗り場の写真
(筆者撮影)
図1.3:大宮駅西口1番バス停の乗客の並び列の位置(国土地理院より筆者作成)

 

大宮駅西口のバス乗り場からは、1.1で説明した市の交通の背景から、東西方向に伸びる多くのバス路線があり、東武バス6路線、西武バス18路線の合計24路線のバスが発着している。 

  そんな大宮駅西口のバス乗り場であるが、多くの課題点が存在する。最も大きな課題は、駅の規模やバスの発着本数に対してバス停が小さすぎることである。図1.2に示されているように、ペデストリアンデッキからバス乗り場に下がる階段やエレベーター周辺の通路は、2人が通るのがやっとの広さしかない。 

 また、バス停が狭いことによって、乗客がバスの到着を待つスペースが十分に確保されていない。図1.3のように、混雑時にはそれぞれのバスを待つ列が長くいろいろな方向に伸びてしまうため、どれが自身の乗りたいバスの列なのかがわからず、バスの誤乗車や、目的のバスを逃してしまう人も多くいた。 

2.1.乗り場の改善を行うことになったきっかけ

  私は大宮国際中等教育学校の1期生で、通学に、大宮駅西口から出発する路線バスを使用していた。当初は1学年160人しかバスを利用しないため、大きな問題はなかった。しかし、年がたつにつれて学年が増えていき、学校へ通う人数も320人、480人と増え、だんだんとバスとバス停の混雑が課題となりつつあった。

 そこで学校の先生と協力して、新たなバス停の周知や開門時間の変更など、様々な活動を始めたことが、乗り場の改善を行うきっかけとなった。

2.2.ロードペイント実現に向けて

図2.2:京急品川駅1番線プラットホームに施されているペイント(京急 2017)

テキスト ボックス: 図2.2:京急品川駅1番線プラットホームに施されているペイント(京急 2017)グラフィカル ユーザー インターフェイス が含まれている画像

自動的に生成された説明ロードペイントのアイデアは、京急線の品川駅を訪れた際に思いついた。京急線品川駅のプラットホームには、「快特・特急」「羽田空港方面」「始発の快特・特急」「普通」の4つに分かれて並ぶよう、4色でペイントがされている。ここから着想を経て、バスのりばにこのペイントが応用できれば、乗る人の待機列が明確になり、混雑緩和につながると考えた。

そこで、バスを運行してくださっている西武バスさまの営業所にお伺いし、ペイントのメリットや必要性について説明した。しかし、西武バス様から「自分たちもペイントはいいアイデアだと思うが、以前提案した際にさいたま市役所から行うことができないと言われた」という旨の説明をされた。そこで、今度はさいたま市役所の交通政策課に対して、同様の説明を実施。ロードペイントの必要性をお伝えした結果、行う方向で調整してくださることになった。

 ペイント原案の制作は、私達で行わせていただけるということで、早速本校生徒のバスに興味のある人で制作した。その後、より良いペイントにするため、同じく西武バスを利用して多くの生徒が登校している大宮南高等学校と大宮光陵高等学校の生徒にも協力を依頼し、本校で制作したペイント案を、3校の生徒で議論し、改善を加えた。このペイント案を、さいたま市交通政策課、西武バスに共有し、大宮光陵高等学校生徒、本校生徒を加えた4者で議論を行い、更なる改善を行った。

 このようなミーティングを2022年7月から2024年3月の約1年9か月重ねて、最終的なペイント案が完成した。そして、2024年4月3日に乗り場にペイントが施された。

2.3.実施されたロードペイントのペイント位置図 

図2.3:大宮駅西口バス乗り場のペイント案。(筆者作成)

3.1.降車客動線の確保   

図3.1:大宮駅西口1番バス乗り場のペイント。(筆者撮影)
ペイントによって並ぶ位置が明確になり、降車された方もスムーズに歩けるようになった。
 

ペイント実施前は、乗車客の待ち列が降車客の動線を遮る箇所にできており、スムーズに降車を行えていなかった。今回のロードペイントは、乗車待ちをしている人の列が、バスの降車位置を干渉しないように作ったため、以前は多くみられた、乗車待ちの列が降車の妨げになっている状態がなくなり、スムーズに降車を行える環境が整った。

3.2.バリアフリー動線の確保

図3.2:大宮駅西口2番バス乗り場のペイント。(筆者撮影)
ペイントの左側に通路が確保され、車いすの方なども移動しやすくなった。
 

写真にあるエレベーターの横など、身体の不自由な方や車いすでバスを利用される方には狭く、通りにくい場所があり、さらに、乗車待ちの列が広がってしまっていた場合はこの通路さえもふさがれてしまい、これらの方が乗降するのには大変苦労するバス停であった。今回のロードペイントでは、写真のように動線が確保されたうえで、はみ出して並ばないように白線が追加されていることによって、車いすの方が通れる動線が確実に確保されているバス停になった。

3.3.誤乗車・乗り遅れの防止

図3.3:大宮駅西口3番バス乗り場のペイント。(筆者撮影)
円阿弥方面(右)と藤橋方面(左)に分かれて並ぶようにした。

 大宮駅西口の3番乗り場からは、2つの異なる経由のバスが出発するが、これらのバスを利用する乗客は1列になってバスを待っていた。これが原因で、乗りたいバスに乗れなかったり、乗る予定でないバスに間違って乗ってしまったりする方が多くいらっしゃった。そのため、ロードペイントによって経由ごとに並ぶ位置を変えてもらい、誤乗車を防止し、スムーズな乗降を行うことのできる乗り場を実現した。

図3.4:西武バスの全面行き先表示(筆者撮影)
前面の系統番号の色は系統ごとに異なる。

 また、西武バスは、図3.4のように、バスの前面の行先表示器が系統ごとに色分けされており、利用者が乗り間違えしないようにしている。図2.3の図などで見ることのできる乗り場ごとの色(黄緑・オレンジ・ピンク・青・水色)はそれぞれの系統番号の色に対応しており、利用者にとって乗り間違えの起こりにくいバス停になるようにした。

3.4.バス遅延の減少

  このように、上で紹介したような改善がされると、スムーズな乗降を実現することができ、自然と遅延の発生を防ぐことができるようになる。

注釈

1)旅客列車のみで、貨物列車は含まない

2)市内移動への利用を見るため、JR新幹線及びJR有料特急は含まない

3)大宮から南浦和間の京浜東北線、東北本線、高崎線、湘南新宿ラインは同じ区間を走行するため合算した両数を表示

引用文献

東日本旅客鉄道株式会社(n.d).「大宮駅」.『JR東日本』.https://www.jreast.co.jp/estation/station/info.aspx?StationCd=350(2022.12.22)

東武鉄道株式会社(n.d).「大宮駅」.『東武鉄道公式サイト』.https://www.tobu.co.jp/railway/guide/station/info/6102/(2022.12.22)

埼玉新都市交通株式会社(n.d).「大宮 時刻表」.『埼玉新都市交通株式会社 ニューシャトル』.https://www.new-shuttle.jp/station/omiya/omiya_timetable/(2022.12.22)

 国土地理院(2022.12.20).「地理院地図vector道路地図・鉄道地図」.『国土地理院vector』.https://gsi-cyberjapan.github.io/gsimaps-vector-stylesamples/index.html#7/36.104611/140.084556/&ls=vstd&disp=1&d=l (2022.12.22)

 京急(2017.04.28).「4月29日(土・祝)から品川駅下り1番線の整列位置と列車停止位置が変更になります」.『京急』https://www.keikyu.co.jp/report/2017/20170424IN_17008YM.html