現在のライフスタイルに合わせた音楽市場の変化について

松本彩芽

Journal of Students Inquiry Volume 3 Issue 1


スマートフォンの普及によって、音楽ソフト市場にはCDに加えて音楽配信サービスが登場した。最近は、多くの会社が定額制の音楽配信サービスを行っているのをよく見る。これらは需要が高まっているからであり、現在のライフスタイルに合っているものであるといえる。私はこのような音楽の楽しみ方、音楽市場の変化について調べることとした。 

キーワード: 技術、スマートフォン、SNS、音楽 

現在、技術の発展によって様々なものの形が変わってきている。身近な技術といえば、人々が毎日身近に使っているスマートフォンが挙げられる。スマートフォンは従来の携帯電話とは異なり、通話やメッセージを行う他にインターネットに接続することができ、パソコンのような機能を持っている。このスマートフォンの普及によってSNSが普及し、様々なサービスがデジタル化・モバイル化している。例えば、屋内での視聴が一般であったテレビは移動中でも見られるようになったり、電話帳の発行が中止になったり、音楽ソフト市場ではCDに加えて定額制の音楽配信サービスが登場したりなど、スマートフォンの普及による変化は大きいといえるだろう。 

そんな中で、私は音楽に焦点を当てた。先ほど述べたように、音楽ソフト市場にはCDに加えて定額制の音楽配信サービスが登場している。最近は、多くの会社が定額制の音楽配信サービスを行っているのをよく見る。これらは需要が高まっているからであり、現在のライフスタイルに合っているものであるといえる。私はこのような音楽の楽しみ方、音楽市場の変化について調べることとした。 

私は探究を行う事前調査としてアンケートを行った。アンケートで、現在の人々の考えを知ることで、現在のライフスタイルに合ったものを考えるベースになると考えたからである。アンケートの対象者は全校生徒とし、92の回答を得ることが出来た。 

質問1として、「あなたは普段どの方法を用いて音楽を聴いたり知ったりしていますか?」というものにした。この質問は、今回のテーマである音楽の売るときの方法・場所(メディア)について知るために行った。選択肢は音楽に関係することをなるべく多く考え出し、SNS、CDショップ、音楽ストリーミングサービス、動画共有サービス、webサイト、音楽番組、その他とした。1番多くの回答数を得たのは動画共有サービスで、次に音楽ストリーミングサービスであった。 

  

質問2として、「あなたの前には、初めて見る楽曲がたくさんあります。どの点に注目して楽曲を選びますか?」というものにした。この質問は、受け手が楽曲を選ぶときの基準を知ることができるものである。選択肢は楽曲を選ぶときの大きな基準となると考えられる曲名、ジャケット写真・雰囲気、アーティスト、言語、その他とした。1番多くの回答を得たのはアーティストで、次に多かったのがジャケット写真という結果になった。 

 私は、事前アンケートの質問1で挙げた複数のメディアについて、より深く理解するためにそれぞれ、特徴、楽曲を売る上でのメリットとデメリットについてまとめた。 

○動画配信サービス(YouTube) 

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YouTubeは、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンブルーノに本社を置くオンライン動画共有プラットフォームで、現在はgoogleの子会社である。世界的に有名で、10億人以上が利用している。ほとんどの動画を再生するには広告動画(CM)を見る必要があるが、動画を投稿する場合でも、動画を再生する場合でも無料で行うことが出来る。

音楽に関わる大きな特徴として、利用者はYouTubeでミュージックビデオを見ることが出来る。ミュージックビデオは楽曲と映像を融合したもので、多くの楽曲がミュージックビデオを作成している。ミュージックビデオは楽曲を聴覚と視覚で楽しむことができ、ただ楽曲を聴くだけでは飽きてしまう可能性があるが、ミュージックビデオがあることによって長く楽しませることができる。一度有名になった動画はとても再生回数が高くなっている。一般的に1万回再生でYouTubeに認められた動画となり広告収入を得ることができる。100万回、1000万回を超えるとヒットした動画となっている。日本の楽曲の場合、米津玄師の「Lemon」の再生回数が7億回と突破している。海外の楽曲(主に洋楽)の場合、10億回を突破している楽曲がとても多く、たくさんの人がMVを再生することが分かる。再生回数が多い場合、人気の高い楽曲として多くの人に見てもらうことも出来、数字から人気を証明することが出来る。その他の特徴として、YouTubeではあなたへのおすすめという機能がある。利用者が見た動画の履歴から、次に見てもらえそうな動画が表示される。この機能によって好みの動画をずっと見ることが出来るため、利用者は検索する手間を省くことが出来、長い時間YouTubeを利用してもらうことに繋がる。主に、検索では再生回数の多い一部の動画のみが表示され、表示できる動画には限りがある。そのため、このようなおすすめ機能があることで多くの動画が表示され、動画を投稿する側は見てもらう回数も増えるため再生回数を稼ぐことが出来るといえる。また、図3のように、YouTubeで動画を投稿する場合、チャンネル(アカウント)の名前、題名、再生回数、そしてサムネイルと呼ばれる静止画像が表示される。サムネイルの影響力は大きく、動画の雰囲気を決める大きな役割を持っている。サムネイルに文字を付けるもの、動画の一部をサムネイルとするもの、それに加えてチャンネルのロゴを表示するものなど、様々な種類がある。

ミュージックビデオは、動画の一部をサムネイルとするものが多いが、商品紹介などの別のジャンルになると商品、紹介する人物の姿、文字といった融合した形もある。様々な形に合わせたサムネイルの在り方がある。 

これらのことから、YouTubeのメリットとして知名度などを再生回数によって表示することが出来ることがあげられる。再生回数が多いほど、多くの人がその動画を目にしたことを示すことができ、再生回数が多いことをきっかけに動画を見る人も増えるといえる。そして、このシステムは無料で使うことが出来るため、気軽に一般の人でも動画を投稿することが出来る。レコード会社などに所属していない個人でも、多くの人の目につく可能性があるところに動画をアップさせることが出来るのだ。しかし、デメリットとして再生回数は簡単に増やすことが出来ないということが挙げられる。2019年には、毎分500時間以上のコンテンツがアップロードされている。このような膨大な量の動画が、すべて見られるということは難しい。色々な機能があっても、多くの人の目に入る動画は全体のごくわずかである。そのため、誰もが再生回数を挙げて有名になることが出来るとは保証されていない。 

○音楽ストリーミングサービス 

音楽ストリーミングサービスにも、いろいろな特徴がある。そこで、音楽ストリーミングサービスの一例としてAmazon Musicを挙げた。Amazon Musicは、2008年から開始された音楽ストリーミングサービスである。月額料金を支払うことで7500万曲以上を聴くことが出来る。 

主に音楽ストリーミングサービスでは、30秒以上再生されたことを1再生とカウントし、1再生あたり権利者には約0.44円が支払われる仕組みになっている。 

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一つ目の特徴として、プレイリスト(曲を集めた再生リスト)があげられる。音楽ストリーミングサービスはアーティスト、国、レコード会社など問わず色々な楽曲を聴くことが出来る。そのため、アーティストの数も楽曲の数も多い。幅広い楽曲を聴いてもらうために、プレイリストが大きな役割を果たしている。主に、図4のようなプレイリストがある。図4は、K-POPと検索して表示されたプレイリストの一部である。白色で囲まれたプレイリストは、1つのアーティストだけの代表曲を集めたものである。有名なアーティストを中心に作られている。このプレイリストは、興味を持ったアーティストの楽曲を知ることに良いものであるといえる。そして、青色で囲まれたプレイリストはURUTRA HDという音質の楽曲を集めたものである。Amazon Musicは3段階の音質があり、URUTRA HDは最も良い音質である。URUTRA HDはCD音質以上の音質である。(図5)このプレイリストでは、このような高音質の楽曲のみを聴くことが出来るものであり、音楽をより楽しんだり、新たな視点から音楽を聴いたりすることが出来る。そして、緑色の枠に囲まれたプレイリストは、K-POPの最新曲や注目されている楽曲が集められたものである。これらの楽曲を知ることで利用者は流行を知ることができ、常に新しい楽曲を知ることが出来る。最後に、黄色の枠に囲まれたプレイリストは、K-POPの歴代ヒット曲を100曲集めたものである。新旧問わず有名な楽曲を知ることが出来るプレイリストとなっている。そのほかに、「晴れた日に聴きたい洋楽」「カフェポップス」「夜のジャズ」など、その場のシチュエーションに合わせて使うことのできるプレイリストや、利用者の好みの楽曲を自動的に集めたプレイリストもある。 

二つ目の特徴として、それぞれの楽曲を長い時間・多い回数聴いてもらうための工夫が挙げられる。まず、歌詞の表示である。再生している楽曲を拡張すると、図のような画面になる。この画面では、曲名、アーティスト名、ジャケット写真、再生時間、そして歌詞を見ることが出来る。歌詞は、楽曲の再生時間に合わせて一文ごとに動いて表示されるものである。音楽ストリーミングサービスは、スマートフォンなどの画面を通じて楽曲を選択し聴くものであるため、聴覚の他にも視覚を使って楽曲を聴くことが出来る。この機能は、利用者に画面を長い時間見てもらうための誘導にもなっているといえる。 

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そして、楽曲を選択するときの表示方法が挙げられる。図6は楽曲を選択するときの画面である。ジャケット写真、楽曲名、アーティスト名、音質(ULTRA HDなど)、歌詞があるかないか(LYRICS)が、一つ一つの楽曲の表示で見ることが出来る。加えて、アーティスト名の左側に、青色の矢印を見ることが出来る。この矢印はこの楽曲を聴いていないときに表示されるもので、楽曲の再生回数が少なくなっていることを表している。再生回数が少ないことを表すことで、利用者はその楽曲の存在を思い出し、まだ楽曲を聴くきっかけになるといえる。さらに、多くの楽曲を偏りなく聴いてもらうことができ、一部の曲に偏り出ることを防ぐことも出来る。 

 音楽ストリーミングサービスのメリットは、色々な楽曲を聴いてもらうことが出来ることである。多くの楽曲を扱っているため、受け手は色々な楽曲に触れることが出来る。プレイリストなどの工夫を行うことで、少しでも多くの人に楽曲を聴いてもらうことも出来る。また、気に入った楽曲は楽曲の選択画面の工夫などによって、何度も長い期間を通して再生してもらうことが出来る。しかし、デメリットとして売る側(権利者)は高い利益を得ることが出来ないことがいえる。1再生あたり約0.44円が権利者に払われる仕組みであるが、この金額はサービス側に払われるお金が引かれた額である。そのため、元の1再生の金額よりも安い金額が払われている。CDの平均価格は、特典にもよるが1500円ぐらいから売られている。この金額を超えるために、再生回数は高くないといけない。もし、CDを売らずに音楽ストリーミングサービスだけで収入を得るようにすると、とても多い回数を再生しないといけないため、リスクがある。しかし、これは、もしとても多くの人に聴いてもらうことが出来ればCDを売るよりも多くの利益を得ることにも繋がる。 

○SNS(TikTok) 

SNSの例として、TikTokというアプリケーションを選んだ。TikTokとは、中国のByteDance社が開発運営しているモバイル端末向けショートビデオプラットフォームである。TikTokは、2021年に世界中で最もダウンロードされたアプリとなっている。ダウンロード数は約6億5600万回となっている。日本だと10代から20代が半分以上を占め、若者に大流行しているアプリといえる。動画を投稿するのは無料で、有名人だけでなく、一般の若者も気軽に投稿することが出来るものとなっている。 

このTikTokの特徴は音楽に合わせた15秒から1分の短い動画となっていることである(※)。5分以上の動画がメインのYouTubeと比較するととても短いことが分かる。そのため、この短い時間でどれだけ印象的な動画にするかというものがポイントとなる。これを解決するために、TikTokでは音楽が重要になっている。TikTokには楽曲の流行があり、様々なユーザーが同じ楽曲を使うことが多くなっている。どの楽曲か分かるように印象をつけるために、アップテンポなものや印象的な歌詞のものが多く、多くの楽曲にはダンスが作られている。TikTokの影響力は大きく、TikTokによって有名になった楽曲は多く、古い楽曲や海外の楽曲なども有名になっている。その他の大きな機能として、TikTokにはレコメンドシステムがある。これは、ユーザーの興味に合わせて厳選された動画が表示され、好きなコンテンツやクリエイターを簡単に見つけることができるシステムである。これは運営会社(bytedance)のAI技術によってできているもので、TikTokを使うほど精度が上がっていく。そしてTikTokは画面をスワイプすると次の動画になり、動画が終了するとリピートするといったシステムになっている。このシステムによってより多いユーザーが長い時間アプリを使うようになった。 

TikTokのメリットとして、楽曲が一度ヒットすれば、不特定多数のとても多くの人に知ってもらうことが出来ることである。TikTokを中心としたSNSはその他のメディアと比較しても、最も影響力があるといえる。そして、デメリットは、ヒットするまでの道のりが長いということである。主に、TikTokで有名になる楽曲はアップテンポなものや印象的な歌詞などが多い。このような条件に適する楽曲を作成するのは簡単にできることではないといえる。そして、流行る楽曲は限られておりごくわずかであるため、簡単にヒットさせることは難しい。 

※2021/7/2には、一般ユーザーの動画の制限が1分から3分となった。 

〇CDショップ 

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CDショップは様々な種類のCDを扱っており、主にJ-POP、洋楽、K-POPを扱っている。無数のCDを売るため、CDショップは商品を目立たせたり説明をしたりするポップに力を入れている。図7は、あるCDショップのものである。写真の右側にあるK-POPグループのITZYは、日本デビューアルバムを発売したばかりの時期であり、掲示がされている。一番上にはグループ名を黒の背景に白い文字で書き、グループ名が分かるようになっている。そして、下にはCDがたくさん置かれている。このように、掲示によってどのグループで、どのようなCDなのかが分かるようになっている。そのため、受け手は、CDショップに入って新しいCDの情報を知り、その場ですぐにCDを買うことができる。 

これらのことから挙げられるCDショップのメリットは、その場で様々な種類の楽曲を知ることができること、すぐにCDを買うことができるということであるといえる。実際にCDを買うことができることは、受け手が気軽にCDを手に取るきっかけになる。そして、デメリットは取り扱っているCDの数が多いため全てのCDを紹介することができないことである。先ほどの写真を見て分かるように、場所が足りないことによって掲示に差が出てしまう。また、実際にCDショップに足を運ばないといけないため、まずはCDショップに多くの人が来るような工夫が必要となる。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で人々が外出を控えている中、これは難しいことであるといえる。 

○音楽番組 

音楽番組は、主に地上波のテレビで放送されているもののことを指す。音楽番組の大きな特徴として、アーティストが出演することがあげられる。曲を聴くだけでなく、異なるセットで、パフォーマンスを様々な角度から見ることもできるため、より楽曲を楽しむことが出来るといえる。日本の音楽番組では、注目されているアーティストを中心に複数のアーティストが出演する。出演することのできるアーティストは限られていて、すべてのジャンルや世代をカバーすることが出来ない。そのため、番組が独自にアンケートを取るなどして作成したランキングなども番組内で発表している。例えば、その季節を感じさせる曲、ある世代に人気の曲ランキングなど、様々な種類がある。 

音楽番組のメリットは、視聴者側はアーティストのパフォーマンスを見ることが出来るということである。多くの音楽番組は、再放送を行うなどして同じパフォーマンスを見ることが出来ない。そのため、その時限定の貴重なパフォーマンスを見ることができ、地上波なので追加の金額を払う必要もない音楽番組は、ファンにとって需要があるといえる。しかし、デメリットとして、安定した視聴率を取ることが出来ないことが挙げられる。出演するアーティストによって、視聴者の興味は異なるため、視聴者が保証されていることはない。そのため、日本の音楽番組は縮小していっていることが現状である。また、最近は家にテレビを置かない家庭も増えており、インターネット上で見ることが多くなっている。そのため、このままデジタル化が進む場合、音楽番組は危機的状態に陥ることが考えられる。 

○Webサイト 

ウェブサイトの例として、ワーナーミュージックジャパンの公式サイトを参考にした。 

株式会社ワーナーミュージックジャパン(Warner Music Japan Inc.)は、米国・ワーナーミュージック・グループ傘下の日本のレコード会社で、2022年1月22日時点の所属アーティストは322組である。 

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サイトのホーム画面(図8)には、アーティストのピックアップがあり、複数のアーティストの写真が自動で左に動く。これらのアーティストは一か月の間で新曲を発表したアーティストが選ばれている。アーティストの写真をクリックすると、個々のアーティストのページに飛び、アーティストの詳細を知ることができる。それぞれ、アーティストの写真の後に最新ニュース、その週のリリース曲、ピックアップされたミュージックビデオ、おすすめプレイリスト、1つのアーティストに特化したものなどの特集、リンクとなっている。ミュージックビデオは、それぞれのアーティストのYouTubeチャンネルに飛ぶ仕組みになっている。おすすめプレイリストは、音楽配信サービス最大手のSpotifyと連携をしており、サイト上では曲の一部(約30秒)を聴くことができる。そのほかにもサイトのホーム画面には、最新ニュース、今週のリリースなど、所属アーティスト全員の情報を1つの場所で見ることが出来る。このようなウェブサイトは、アーティストに関する細かい情報を掲載しているため、アーティストと受け手を繋ぐ役割を果たしているといえる。 

これらのことから、ウェブサイトのメリットはアーティストの情報をまとめて掲載できることと、色々なアーティストの最新情報を知ることが出来ることであるといえる。アーティストに関する詳しい情報を一度に知ることが出来るため、新しく知ったアーティストやアーティストの最新情報などを簡単に知ることが出来る。また、色々なアーティストの最新情報を知ることが出来るため、知らないアーティストを見つけることも出来る。そして、デメリットは、知名度が低いアーティストの場合、表示されることが少ないことである。はじめの画面にアーティストのピックアップがあるが、アーティストの名前と写真が表示されるだけであるため、興味を引くことは難しいだろう。また、ウェブサイトであるため、何かのきっかけがない場合、サイトに訪れる人は少ない可能性がある。 

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 楽曲は売る方法・場所(メディア)の他にも、楽曲自体に工夫がされているものがある。私は、その例としてBella Poarchの「Build a B*tch」を挙げる。 

ベラ・ポーチはTikTokの動画によって有名になり、幼い頃からの夢であった歌手になった。ベラ・ポーチの動画は、2020年で最も再生された動画となり、フォロワーは世界3位である。 

この楽曲は、ベラ・ポーチのデビュー曲である。歌詞には「完璧を目指す必要なんてない」という強い女性のメッセージを持っている。多くの女性が共感するようなメッセージであり、多くの人を引き寄せるものである。 

そして、音楽の特徴として、2つ挙げられる。これらは、TikTokを行っているベラ・ポーチらしい特徴である。一つ目は、サビの前とサビに大きな違いがあることである。サビの前とサビで大きな違いがあることで、TikTokではメジャーな変身する動画の音源として使うこともできる。サビの前はベラ・ポーチが歌っているが、サビの直前になると歌の裏で「one, two, three,ooh」という声があり、その後は「La-la-la…」というメロディーだけになっている。(図9)「one, two, three,ooh」という声に合わせて画面が変わり、変身した姿になり、「La-la-la…」というところでは大きく曲の雰囲気が変わることで変身した後の姿を目立たせることも出来る。図10は、ベラ・ポーチのTikTokに投稿された動画の2つの場面を撮ったものである。左のパーカーと雑にまとめた髪の毛という姿から、右のベラ・ポーチのポイントとなるツインテールとタトゥーが見える姿になっている。この2つは、サビの前と後の場面である。このような変身動画はTikTok上にはたくさんあり、このベラ・ポーチの楽曲は変身動画をきっかけに有名になり、YouTubeの現在の再生回数は3.6億回となっている。二つ目は、楽曲の長さである。先ほど述べたように、TikTokの動画は15秒から1分の動画が多く投稿されている。そして、この楽曲による変身動画は、15秒以内に収まっている。ほとんどの動画が、図9の上から5行目の歌詞から始まり、「La-la-la…」というところは一小節分を流して終わっている。「La-la-la…」の一小節分が約4秒となっていて、その前の歌詞のところは10秒ぐらいになっていることがいえる。これは、変身する前の時間を長くし視聴者を期待させ、変身した姿を短くすることで貴重な姿であることを表すことが出来る。また、変身した後は音楽が途中で切れないように、一小節で「La-la-la…」が収まるように計算されていることも考えられる。 

事前に行ったアンケートの質問2で、楽曲を選ぶ視点について質問をした。最も多かったのがアーティストで、次に多かったのがジャケット写真であった。初めて見る楽曲の場合、アーティストについてよく知らないが、そこでアーティストについて知れる一つの手段がジャケット写真である。ジャケット写真は楽曲を視覚から楽しむことが出来るものであり、現在は楽曲には必ず必要なものである。そこで、ジャケット写真にも売るための工夫があるのではと考えた。ジャケット写真の内容、色に注目をして行った。 

まず、ジャケット写真の内容についてである。ジャケット写真にはアーティストが分かるものがある。ジャケット写真にアーティストの写真がある場合である。特に、デビュー曲やコラボした楽曲の場合に多い。デビュー曲の場合、楽曲とアーティストを共に覚えてもらうためにジャケット写真にアーティストの写真を使うことが多くみられる。初めて見る側も、アーティストの顔を知ることでアーティストについて知ることが出来る。そして、コラボした楽曲の場合には、両方のアーティストの写真を使うことで、誰がコラボしたのか、誰とコラボしたのかを知ることが出来る。 

二つ目に、色に注目をした。図11と12は、それぞれAmazon Musicのプレイリストの一部である。公平性を保つため、それぞれのプレイリストに入っている順番の1~19番をピックアップした。図11は、Rap Rotationという、「ラップ」のジャンルになる楽曲を集めたプレイリストである。そして図12はChill Houseという、「チル」のジャンルになる楽曲を集めたプレイリストである。2つを一目で見ただけでも、ジャケット写真の色に違いがあることが分かる。図11の楽曲のほとんどは黒色のジャケット写真であるのに対して、図12の楽曲のほとんどは、黒色はあまり目立たず白や水色などの明るい色が目立つ。この違いは、ジャンルにあるといえる。ラップは、一定のリズムに合わせて韻を踏みながら歌詞を読み上げる歌唱方法のことである。楽曲として売るほかに、相手の悪口などを言い合うラップバトルやその場で考えて即興で歌うフリースタイルなどもある。ラップは、ラップバトルのような相手の悪口などを言うことがメインとなっていて、明るいイメージよりも暗いイメージがある。また、歌詞も明るい内容よりも暗い内容が多く、強気な歌詞や相手を罵倒するような歌詞も多い。対して、チルはくつろぐという英語の言葉から付けられた名前であり、落ち着いたテンポで、おしゃれな楽曲が多いジャンルである。落ち着いたテンポの楽曲であるため、ラップとは異なる明るいイメージになる。そのため、このような違いが生まれたといえる。 

これらのように、ジャンルや曲から得られる雰囲気をジャケット写真の色で表すことで、受け手は見た目から曲の雰囲気を知ることが出来る。自分が好きな雰囲気のジャケット写真から選ぶ方法もあり、無意識に自分が好きなジャケット写真から楽曲を選ぶこともあるといえる。 

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図13と図14は音楽市場の変化を大きく表しているものである。図13は、音楽ソフト(CD)の生産数量と生産額について、図14は音楽配信(音楽ストリーミングサービス)の売上の推移となっている。図13を見て分かるように、生産数量、生産額ともに右肩下がりの状態であり、過去最低の結果となっている。対して、図14を見てわかるように、音楽ストリーミングサービスの売上額は右肩上がりの状態である。それぞれ2019年度のデータであるが、この推移をみる限り、それぞれの動きは変わらず右肩下がり、右肩上がりとなるだろう。 

 しかし、現在、日本は世界で最もCDが売れる国とも言われている。数値は下がっているものの、CDの売上は保たれている。これは、CDの購入とともに付いてくる握手券や写真集などの特典を求めて買うファンが多いからである。このような特典は、アイドルに多い。好きなメンバーのグッズをゲットするために、ファンは多くのCDを購入するのだ。 

 最近、オーディション番組を通じて知名度を上げたグループが多い。そもそもオーディション番組とは、アーティストの実力やエピソードなどを公開し、アーティストが夢を叶えるまでの道のりを追った番組である。受け手には、アーティストの色々な面を知ることで、アーティストのことがより好きになり、アーティストがデビュー出来るように応援してもらうことが目的である。主に、オーディションを運営している側が実力を見て評価を行い、デビューメンバーを決める方法と、視聴者が番組を見てアーティストの実力を知って投票を行い、デビューメンバーを決める方法がある。大規模なオーディション番組の場合は後者の方法が多く行われている。 

 オーディション番組から生まれたグループの実績は高く、Nizi Projectから生まれたガールズグループのNiziUは、デビューしてから最短で紅白歌合戦に出場した。その他にも、音楽チャートの首位を獲得、プレデビュー曲の「Make you happy」のミュージックビデオの再生回数がYouTubeで2億回越えなど、人気から強い影響力を発揮した。 

これらの調査から、現在のライフスタイルに合わせた音楽市場の変化について考えた。私は、6番の音楽ソフト、音楽配信の売上の推移から見ても、今後は音楽ストリーミングサービスが発展していくと思う。 

音楽ストリーミングサービスは受け手と売り手の両者に良い影響を与える。まず、受け手への良い影響は、定額制でたくさんの楽曲を聞くことができることである。CDの場合は一枚一枚購入しないと楽曲を聞くことはできない。しかし、音楽ストリーミングサービスはその必要がなく、新しい楽曲でも抵抗なく聴いてもらうことが出来るだろう。次に、売り手への良い影響は、収入である。音楽ストリーミングサービスで多くの人に聞いてもらうことが出来れば、長期的に、CDを販売するよりも高い収入を得ることが出来る。CDは「モノ」であるため、売れ残りなどのリスクが高い。しかし、音楽ストリーミングサービスはデジタルなのでそのようなリスクはなく、知名度の低いアーティストでも気軽に楽曲を売ることが出来る。また、音楽ストリーミングサービスが生まれる前はオーディションを通じてレコード会社に入り、楽曲を売るシステムであった。しかし、音楽ストリーミングサービスが生まれたことでスマートフォンが一台あれば楽曲を売ることが出来るようになった。これにより音楽が売りやすく、多くの楽曲が売られる良いきっかけになったといえる。 

現在、スマートフォンの普及率が高く、それによってテレビを置かない家庭や、外に出ずにネットショッピングでものを購入する人も増えている。その中で、デジタルというのは需要が高く、今後も伸びていくだろう。 

黄未来(2019年). 『TikTok 最強のSNSは中国から生まれる』. 〒150-8409; 東京都渋谷区神宮前6-12-17:ダイアモンド社

コスモポリタン編集部(2021.7.15).「完璧じゃなくていい!TikTokから夢を叶えた「ベラ・ポーチ」」. 『COSMOPOLITAN』. https://www.cosmopolitan.com/jp/promotion/cosmo-promotion/a36993010/bella-poarch/ (2022.1.28).

週刊女性PRIME(2021.11.11). 「最新ヒットソングの尺が90年代と比べて約1分以上短くなった理由」 https://news.yahoo.co.jp/articles/0b30b35a93b941e27edf9dff3fcaaa94f363059a?page=2『Yahoo!ニュース』(2022.2.23)

総務省統計局(2022.2.8). 『家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について (二人以上の世帯) -2021年(令和3年)12月分結果-』 https://www.stat.go.jp/data/joukyou/pdf/n_joukyo.pdf (2022.2.24)

「ワーナーミュージック・ジャパン | Warner Music Japan」(n.d.). 『ワーナーミュージック・ジャパン | Warner Music Japan』. https://wmg.jp/ (2022.1.28)

「2019年の音楽ソフト売り上げは2998億円:ストリーミングが前年比33%増」(2020.06.11). 『nippon.com』 https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00740/amp/ (2022.2.23)

Adam Blacker (2022.12.27). 「Worldwide and US Download Leaders 2021」. 『apptopia』. https://blog.apptopia.com/worldwide-and-us-download-leaders-2021 (2022.1.28)

「Bella Poarch – Build A Bitch Lyrics」(n.d.). 『AZLyrics』. https://www.azlyrics.com/lyrics/bellapoarch/buildabitch.html (2022.2.23).

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TikTok(2020.6.19). 「TikTokが「おすすめ」に動画をレコメンドする仕組み」. 『TikTok』. https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/how-tiktok-recommends-videos (2021.12.24)

James Hale(2019.5.7). 「More Than 500 Hours Of Content Are Now Being Uploaded To YouTube Every Minute」. https://www.tubefilter.com/2019/05/07/number-hours-video-uploaded-to-youtube-per-minute/ 『tubefilter』(2022.2.23)