大宮国際を環境によりよい学校にするために
但木心優
Journal of Students Inquiry Volume 1 Issue 2
今回このレポートでは大宮国際中等教育学校での紙の利用についてをまとめた。現状のままでは環境へ悪影響が及ぶと予測されるため、これらの問題を解決する必要性が高いといえる。今回の調査で現状についてを再確認することができたうえ、様々な解決方法を知り、考案することができた。今後自分自身も環境の事をよく考え、紙の無駄遣いをしていかないよう気を付けていきたいと思う。
近年SDGsなど環境について考慮する動きが活発となっている。私の通う大宮国際中等教育学校でもこれらの問題を解決するための探究活動が多く行われている。私も同様に学校に関する環境に関した課題について調査している。環境という広い視点のなか、今回私が注目したのは身近でかつあまり意識しない紙の使用についてである。紙の使用について改善をする必要があることは環境への悪影響が理由となっている。まず紙を生産するにあたって原料となる木を切る必要がある。このため紙の大量生産や無駄遣いによって森林伐採多く行われ、環境破壊につながる。また紙を1t燃やしたときに1520kgの二酸化炭素を排出するなど、紙の利用にあたって多くの排気を排出する。このような点から地球温暖化をはじめとした気候の異常現象や生態系が崩れるなど自然界に様々な悪影響を及ぼされている。このため私たちは紙の使い方について今一度考える必要がある。本校では生徒は紙の使用の仕方が目立つという意見が多数挙げられているということもあり、見直しが必要だと考えられる。ここでは、本校がより環境に良い学校となれるよう現状の課題を洗い出し、解決策を考案する。
2.1 本校の紙の使用の特徴
本校にはプリンターが校内各地に設置されており、生徒が使えるプリンターの数は7台を超えている。本校には生徒のプリンターの使用に関する大きな規則等は掲げられていない。このため、生徒はいつでも自由に印刷等を行い好きなように紙を使用することができる。
主な印刷の内容は、
・授業で使う冊子
・授業や課題に使うプリント
・ポスター、チラシ等の広告物のプリント
など様々なものがあり、このように毎日この校内のプリンターは生徒に使われている。
2.2 紙の使用の現状
今回、本校の紙の使用の現状を調査するために2種類の実験を行った。
実験1
校内に設置されているプリンターのうち図書室に設置されているプリンターを調査対象とする
調査期間
1回目:6/23~6/30 2回目:7/8~7/22 (全23日)
調査方法
図書室のプリンターの近くに設置されているミスコピーボックスの中身を実験開始日にすべて空にする。
実験期間の最終日にボックスを回収する。
回収した紙を種類ごとに分別し、枚数を計測する
紙の種類分け
A.A3両面印刷 B.A3片面印刷 C.A4両面印刷 D.A4片面印刷 E.そのほか(A3,A4以外のサイズの用紙)F.白紙
結果
表
A3 | 74 枚 |
A4 | 268 枚 |
そのほか | 19 枚 |
白紙 | 8 枚 |
合計 | 369 枚 |
実験2
校内に設置されているプリンターのうち図書室に設置されているプリンターを調査対象とする
調査期間
7/8~7/22 (15日間)
調査方法
図書室の司書の方に依頼をし、期間中各サイズのコピー用紙を何回入れ替えたかの記録を取っていただく。
調査最終日に結果を受け取りに行く。
対象用紙
A.A3用紙 B.A4用紙
結果
一束500枚 | 箱 |
A4 | 3 |
A3 | 1 |
二つの実験からわかる現状
まず実験1より約3週間の日数の間に369枚の紙がミスコピーとしてでており、A3用紙もA4用紙として計算すると、416枚のA4用紙がミスコピーとして出たという事がわかる。またミスコピーの特徴としてA3とA4用紙の約3分の2が片面印刷かつ、そのうち約3分の1は両面印刷する予定だったものを失敗して片面印刷したものであると考えられるものとなっていた。
次に実験2より約2週間の間にA4用紙が3箱、A3用紙が1箱交換されたという事がわかる。司書の方に聞いたところ、この箱一つにつき500枚入っているという事であるため、期間内で最低でもA4用紙が1500枚、A3用紙が500枚、合わせてA4用紙を約2500枚使われたという計算となる。
2.3 問題点
ここからの問題提示では数値の比較が行いやすいようにするためA4用紙一枚が4gと考えて重さ単位での数値を扱う。
課題点1 紙の使用量が多い
今回の調査で行った実験の結果をもっとに単純計算をしていくと、本校では1年間で生徒一人当たり約1.820tの紙を消費したといえる。この数値をもとに生徒の数で割ると一人当たり約3kgの紙を消費したこととなる。対して日本人一人当たりの紙の消費量を調べたところ、日本製紙連合会より2020年度は178.4kgであるとわかった。この2つの数値を比較するだけでは本校の紙の消費量が多いとは感じられにくい。しかし、日本1人あたりの紙の消費量についてのデータは学校等で使われたコピー用紙だけではなく包装紙、トイレットペーパーなど様々な紙類を含んだものとなっている。新聞紙は28.8kgなど、これらのコピー用紙以外の紙類は生活の中で多く使われている。このようにコピー用紙以外の紙類が多く使われていることを踏まえて考えると、コピーの用途でかつ学校にいるだの間のみで使われている紙の量が数㎏あるという事は問題となると考えられる。また、今回の実験調査では調査対象期間が短かったことに加え、比較的課題や授業などでの印刷が不要な時期であったこと、調査対象のプリンターを前期生と後期生の両方が同じぐらいの頻度で使う図書室のもに選んだため実際にはその他に置かれている利用率のプリンターのほうが消費量の多い結果が出る可能性がある。そして本校の生徒がまだ4学年までしかおらず、人数が今後増えていくことなど、今回の結果よりも紙の消費量の数値が高くなることが考えられる要因がいくつかある。このためより一層本校での紙の使用量について問題があるといえる。
課題点2 紙を無駄に利用している(ミスコピー)
問題1と同様に今回の実験結果をもとにした一年間の数値で考えると本校では一年間で約198kgのミスコピーを出している。この数を紙の使用量で割るとミスコピーの枚数は紙の使用量全体の約10%を占めていることがわかる。つまり、利用された紙の10枚に1枚がミスコピーとなることが現状であるとわかる。校内で使われている紙の数が増えれば増えるほどミスコピーの数も増えると考えられる。またこのミスコピーの特徴として、片面印刷が多いという事がわかる。(資料「ミスコピー枚数と内訳」より)片面印刷が多い理由として考えられるものは片面印刷だと両面印刷と比較して同じ範囲の印刷をしたときに必要な紙の枚数が2倍になること、そして印刷ミスを起こしやすいということである。パソコンからの印刷をすると初期設定では片面印刷が選択されている。このため急いでいるときに印刷をしようとした場合、両面印刷をするはずだったところを設定の変更を忘れて片面印刷の状態で印刷してしまうことがあり得る。本校は授業間に教室の移動など、忙しいことが多いためこのようなミスが特に起こりやすいと考えられる。この2つが起こった場合、不要な紙が予定よりも2倍多く使われるうえ、もう一度印刷をして紙を使用する必要がある。そしてこの時にできたミスコピーは使われずにボックスに入れられることとなる。このようなミスコピーが多いことに加えて本校での印刷の用途から名前をはじめとした個人情報などが記載されたものも多数あり、裏紙等として使いまわすことが難しい場合も多くあるという問題もある。
これらの事から本校の課題は以下の二つであるとわかる。
・紙の消費が激しい
・ミスコピーを多く排出している
3.1紹介
実際にこの問題の解決策を考える前に現在すでにオフィスなどで行われている紙の消費量削減方法を紹介し、紙の消費量を減らすためにできる対策のポイントを見つける。調査の結果、下記のような削減法が行われていることがわかった。
削減方法 | 説明 |
紙の使用量を見える化する | 部署などのある程度のグループごとの紙の使用量を計りグラフを作成して掲示することでより削減の意識が高まる |
配布資料をデジタル化 | パソコン等を活用してオフィス内で取り扱う資料をデジタルにする。必要な紙も減るうえ、ほかの人との資料の共有などが行いやすい |
裏紙利用の促進 | どうしてもアイディア書き出しなど、紙が必要な時にも紙を無駄にせず使うことができる |
具体的な方法を提示&推奨 | 縮小コピーなど具体的な方法を提示することで積極的にペーパーレス化に参加しやすくなる |
コピー用紙の利用の削減を促すポスターを掲示する | コピーを行う前に立ち止まらせて不要な印刷を削減することができる可能性が上げる |
ルールを設ける | ・両面印刷の義務化 ・白黒印刷の義務化 ・プレビュー確認 などが例 ルールを守ることによって確実に紙の消費量を減らすことができる。ただ、設けたルールによっては業績が下がることもあり得る。 |
目標を掲げる | 目標を達成に向けて何をすればよいかを考えるようになる |
紙を使わないことを目的ではなくよりよいワークスタイルを増築するための手段として掲げる | 働く人のモチベーションを高くもたせたまま紙の利用削減につなげることができる |
ペーパーレス会議を導入 | 紙を不要とした会議を行うことで紙を利用する必要性を下げる |
ミーティングノート(デジタル版)を活用する | メモをアナログからデジタルに変える事でわざわざ紙を用意する必要がなくなるうえ、過去のものも簡単に記録として残して見返すことができるようにする |
ストレージを利用する | データの管理が難しいという問題を解決することができる |
計画もデジタルで行う | デジタルで行うことでタスク管理が行いやすくなり、まとまる。また、無駄な紙の利用も減る |
文書のスキャンを行えるようにする | これまで紙で行ってきたものをスキャンすることでよりスムーズにアナログからデジタルへ移行させる |
3.2 特徴(ポイント)
3.1をもとに大まかな紙の利用削減に対する策を分類すると、
・達成状況のわかりやすい目標の設定
・デジタルに移行しやすいシステムを導入
・配布物等のデジタル化
・ルールや行動の改善につながる物を作成
という4つがあることがわかる。
ほとんどの方法が上の4つのどれかしらに関連している。そしてここから考えた紙の利用削減に効果的な策の特徴及びポイントは、
- 取り入れやすい簡単な方法で行う
- 多くの人々の影響を与えられることを行う
- 利用者の意識につながることを行う
という3つが挙げられると考えた。1つ目は一度に状況をすべて変えることは難しいため、行いやすい小さなことを積み重ねで少しずつ改善していくほうが良いという事を示す。2つ目は改善をするにあたってその場にいるすべての人が行うことが必要となるため、なるべく多くの人ができる方法を提示する。そのうえでその行動を行おうという気持ちになってもらう必要がある。このポイントを達成させるために3つ目が存在する。より多くの人からの協力を得るためには人々の意識を高める必要があると考えられる。実際に行われてきた方法でも意識をペーパーレスに向けているものがいくつかあるためこのこともポイントとなると考える。
今回提案する新しい解決策は三つある。
1つ目はペーパーレスな授業を行うという事である。このペーパーレスな授業では配布プリントなどをデータで配布するというものとなる。この提案のメリットは生徒が1番紙を使うタイミングが授業内であるため、プリントをデータとすることで紙の使用量を減らすことができるという事である。また、プリントの管理が行いやすくなるためプリントの紛失やかさばりなくなり、授業や復習を円滑に進められるという事も利点となる。対してデメリットとしては授業の内容によってデータよりも紙媒体のほうが作業を行いやすい場合があるということが挙げられる。ほかにも、パソコンの電源が切れてしまうと何もできなくなってしまう事や人によってwordなどを使った際にメモなどの書き込みが難しくなり快適に授業を受けることができなくなる可能性があることもデメリットとなる。このためこの提案を実施する際にはデータまたは紙のどちらかを選べるという形式にするべきだと考える。
2つ目の提案はポスターの掲示である。このポスターでは印刷が本当に必要か、また印刷の設定が正しいかを確認させるためのもの、使った紙の量など現状を示したもの、そして紙の使い過ぎが環境に与える影響などの情報についてなど様々な内容をそれぞれに書いて掲示するというものとなる。この提案のメリットはプリンターの近くに掲示することができるためターゲットに1番見てもらいやすい位置に設置することができる媒体を用いているという点である。印刷をするたびに見れば印刷をする前に立ち止まるきっかけとなることに加えて、現状を知ってもらう事ができるため生徒の意識を変えることができる可能性があり、効果的だと考えられる。しかし、ポスターであるが故に気付いてもらえないことや見た人の心に刺さりにくいという事も考えられる。このため、人の目を付けたポスターなど心理学的に人が見たときに印象深くなるような工夫をすることが必要となる。
3つ目の提案はタスク管理、メモなどが学校のパソコンでできる方法(アプリ)を紹介・推奨するということである。この提案は今までメモなど紙を使っていたことをパソコンでできるようになるため、紙の使用量を減らすことができる事がメリットとなる。また、この方法では今までの行動に使っていた紙をパソコンに置き換えているだけであるため、簡単で実践しやすいといえる。この方法のデメリットは現時点の生徒配布のパソコンの状況からアプリのインストールができないことや申請が難しいなど、今の状況からできないものに対してはあまり現実的な方法であることだ。このためこの提案内容は可能な範囲で行うことが必要である。
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